某所 龍の峰 完登|諦めきれなかった美しい岩

外岩

2025.3.1 某所・龍の峰 4/5段が登れた。
一度ならず二度諦めた課題。ずっと胸につかえていたものが、あるいは心の焦りやモヤモヤが吹き飛んだ。

一宮大介氏初登であるこの課題、情報が出ると同時にノムシンや今泉裕太氏ら有名クライマーが一斉に登り、その動画でこの岩と龍の峰という課題の存在を認識した、それがだいたい二年くらい前。

一年ほど前に縁があり行く機会があり、下部二段を目標として足を運んだ。

動画で見ていたので見た目は知っていたつもりだったが、やはり岩の大きさや美しさは動画では伝わらないなと思った。想像していたよりずっと大きく美しく、強い傾斜があった。鏡面のような岩肌に奇跡的に突き出たスタートのホールド。久しぶりに湧き出た岩の見た目に一目惚れする感覚。「どうしても登りたい!」という衝動に駆られた。

下部二段はデッドポイントとヒールを用いて壁の形状に自分を合わせていく所謂コツ系。これは結構得意で2-3時間で登ることができた。直ぐに龍の峰パートに取り掛かったが、問題となるガストンの核心ホールドは異常に小さく、当時の自分には保持することは不可能に感じた。

一年前はまだ三段がいくつか登れたくらいの時期だったので四段、なんなら表記上は四/五段という未知のグレードに臆した部分も多々あるとは思う。それにしたって指先4本がギリ入る程度のホールドに全体重を掛けていくような指力も胆力も当時の自分は持ち合わせていなかった。

ただ、実際にはちゃんと挑めば戦えたのかもしれない。当時の自分は威圧感すら感じるこの大岩に心を折られてしまった。「強くなったら登りに来よう」そう思い一旦距離をとった。

それから半年も経たないうちに耳に入ってきたのは「核心ホールドが欠けたらしい」という声、なんて絶望的な情報。元のホールドさえ持てなかったのにもう無理だろ、、と思ったし、実際SNSを眺めていても完登動画はほとんど流れてこなくなった、正直諦め半分。頭では無くなった課題ということにしていたが、あの時ちゃんと挑んでおけば・・というモヤモヤは消えなかった。

モヤモヤを抱えたまま昨年末、インスタを眺めていると友人が龍の峰を完登する熱いトライの動画が流れてきた。気迫のこもった登りを見て 強ければ登れる、そして不可能ではないことを目の当たりにして諦めた自分カッコ悪いな・・と思ってしまった。

あれからの期間で四段に到達していたこと、年末遠征で目標としていた追憶が登れたことなど、調子も良いし自信も付いてきていたこともあり、今度は登れるまで通うことにした。

一月、芯まで冷える寒さの中大岩と再び対峙。見た目までは覚えていなかったが、問題のホールドは確かに以前とは比べ物にならないほど小さくなっていた。指先がギリギリ四本入ったはずのホールドは指先が二本入るかどうかくらいのまるで石ころの様になっていた。

この課題の核心部は上下に分かれたガストンホールドのどちらかを保持し体重を足で逃して手を寄せてくるところ、そしてそこから右カンテに移動するまでの一連の動きだ。今回欠けたホールドは下のガストンホールドで、従来は下IN上寄せが多かったが友人含め最近の主流は上IN下寄せらしい。下ホールドが悪くなったからだろうと思う。

試しに上INで何度か試してみるとなるほど確かに寄せることができた。思いの外あっさりと核心の一つを突破できたことに安堵と喜びを感じた。丸一日掛かったけど、、

そこから数日色々とこねくり回してみたが、結局今の自分の実力ではこのムーヴでは無理ということが分かった。下ホールドが悪すぎて次の右手が出ない&出せても保持できないのだ。悔しい。

このままじゃ埒が開かないので色々と試す中で、下IN上寄せを改めて試してみた。そしたらなんと寄せることに成功した。オマケに右カンテまで一気に繋がってしまった!思いがけない進歩に驚きと高揚感。不可能が可能になった瞬間、毎回このタイミングが一番楽しい。

バラしで何度かなってみたがヨレていなければ3-4割くらいの確率で寄せることができる様だった。下部二段の自動化を進めれば直ぐにでも通せるレベルだろう。その日は二段パートを三回ほど登って岩を後にした。

二週間後、通すつもりで気合を入れて岩を訪れた。ムーヴ確認しつつ岩を眺めていると何かがおかしい。

指を入れていた隙間がない、何度見ても無い。恐々としつつ触ってみるがやっぱり無い。

どうにか保持していた核心ホールドが跡形もなく消えさっていた。出来ていたはずのムーヴも出来なくなっている。正直なところだいぶモチベは落ちたし絶望してしまった。やめたくなった。 結局この日は何も出来なかった。

でもやっぱりこの美しい岩を諦めきれなかった。今登らなきゃもっと悪くなるかもしれないし悪くなったホールドを持てないのは弱いだけ、きっと五段クライマーなら登れるだろう。登れるまで通うと決めたからには登ってやるという一心でトレーニングに励んだ。

暖かくなってきた3月1日のニトライ目。絶対に落ちないという信念を胸に岩に向かい、これ以上ないほど気合いを入れて保持した。

核心部、最終的に下INを選択。右手を伸ばした時、人差し指から盛大に流血しているのが目に入り一瞬集中が切れかけたが保持感は良かった、どうにか持ち直して足移動し強めのキョン、上側に左手が寄った。

左手の保持感は浅い、ほんとはもっと奥側を握り込みたかった。ダメ元半分祈り半分で右手を出す、止まった。左手が外れかける感覚の中、右カンテにランジ、本当にギリギリで耐えれた。

そのあとは夢中でマントルを返した、呼吸が止まっていたことに気付き意識して息を吸ったがその時には岩の上。自分でも驚きの完登だった。

岩の上で右手を見たらやっぱり盛大に流血していた笑 下部二段の時点でどっかこすってたかな。

龍の峰

正直背伸びして挑んだ部分はあったと思う、でもこのタイミングで登れてよかった。欠けても諦めなくて良かった。最高の達成感と成長を与えてくれたこの課題と初登者に最大級の感謝を。

諦めなければ絶対登れるとは言えないが、諦めなければ登れるかもしれない。 そんな当たり前を思い出させてくれる思入れの深い課題になった。

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